いまさら聞けない税金Q&A

いまさら聞けない税金Q&A

Q 特例事業承継税制を適用できる要件をわかりやすく説明してください
A

要件は大きく(1)会社側の要件、(2)先代経営者の要件、(3)後継者の要件、(4)後継者が取得する株式数 の要件があります。
さらに、(5)贈与後にも特例を受けるために満たさなければならない要件 があります。


(1) 会社側の要件

◆会社の規模

特殊事業承継税制会社規模表
・資本金か従業員数のいずれか満たしていればよい

・直近の事業年度における総収入額が1円以上である
・常時使用する従業員の数が1人以上である
・非上場会社である
・贈与の場合の雇用要件として
贈与認定申請基準日における常時使用する従業員が贈与時の8割以上を維持していること
・相続時の雇用要件として
相続開始の日以降5か月を経過する日における常時使用する従業員数が相続開始の日における常時使用する従業員の数の8割以上を維持していること
・相続で納税猶予(特例)を受けるためには、相続の開始後8か月以内に都道府県知事に承継計画を添付した認定申請書を提出する必要があります。相続税の申告期限より短縮されているため失念に注意!

◆会社側の要件で該当すると適用できないケース

性風俗関連特殊営業を営んでいる場合は不可
医療法人、社会福祉法人、税理士法人は対象外
判断する会社およびその代表者とその同族関係者が50%超の議決権を保有する会社(特定特別関係会社)が上場会社、大法人、風俗営業会社等に該当する場合には不可

資産保有型会社に該当すると適用できない
資産保有型会社とは以下の「特定資産」の価額の総額が全資産の70%以上を占める会社のことをいう

◎特定資産とは
・有価証券及び持分(特別子会社の株式または持分を除く)
・その中小企業者が現に使用していない不動産
・ゴルフ場その他の施設の利用権(事業の用に供することを目的として有するものは除く)
・絵画・彫刻・工芸品その他の有形の文化的動産、貴金属・宝石(事業用として有するものを除く)
・現預金
・代表者同族関係者に対する貸付金及び未収入金

資産保有型会社の判定式
判定時における特定資産/判定時における資産価額総額 ≧70%
*貸借対照表の帳簿価額で判定、引当金は控除しない
判定時期・期間
認定時
相続の場合には相続開始の属する事業年度の直前事業年度開始の日以降の事業年度を通して判定

資産運用型会社に該当すると適用できない
資産運用会社とは直近の事業年度における総収入額に対して、特定資産の運用収入の合計額が75%以上を占める会社をいう
特定資産の運用収入は
有価証券の受取配当、預貯金の受取利息、賃貸不動産の受取地代・家賃がある
有価証券の譲渡価額や特定資産である不動産の譲渡価額そのものも含まれるため注意
判定時期・期間
相続等の場合は、相続開始直前事業年度において判定

ただし、資産保有会社・資産運用会社と判定されない場合があります。
以下のすべてを満たす場合 〇(適用除外にならない)
(i) 3年以上 商品販売・貸付(同族関係者を除く)等を行なっている
(ii) 後継者・生計を一にする親族以外の常時使用従業員が5人以上である
(iii) 常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場等を所有または賃貸している
(ii)は判定日の現況で判断する


(2) 先代経営者の要件

 会社の代表権を有していたこと
 贈与(相続)の直前において、贈与者(被相続人)及び贈与者(被相続人)と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
 贈与時において会社の代表権を有していないこと
 先代経営者以外で会社の代表者であったことがない複数の株主からの贈与・相続・遺贈の場合には、先代経営者から一括贈与等を受けることが前提となる
要注意!先代経営者が平成29年12月31日以前に死亡し、先代経営者の配偶者が株を相続していても配偶者が会社の代表権を有したことがない場合には先代経営者の配偶者から後継者への贈与には適用ありません!


(3) 後継者の要件

【贈与の場合】

贈与時において
会社の代表権を有している
20歳以上である
役員の就任から3年以上経過している
後継者及び後継者と特別の利害関係がある者で総議決権数の50%超の議決権を保有することとなること
後継者の有する議決権数が次のイまたはロに該当することとなる

(特例措置)
後継者が一人の場合
後継者と特別の関係がある者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
後継者が2人または3人の場合
総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係があるもの(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することになること

【相続の場合】

相続開始時において
相続開始の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有している
相続開始の直前において、会社の役員であることを(被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く)
相続開始の時において後継者及び後継者と特別の利害関係がある者で総議決権数の50%超の議決権を保有することとなること
後継者の有する議決権数が次のイ又はロに該当することとなる

(特例措置)
後継者が一人の場合
後継者と特別の関係がある者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること
後継者が2人または3人の場合
総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係があるもの(他の後継者を除く)の中で最も多くの議決権数を保有することになること


(4) 後継者が取得する株式数の要件

1.後継者が1人の場合
a≧b×2/3-c の場合:b×2/3-c 以上の株数
a<b×2/3-c の場合:aのすべての株数

2.後継者が2人または3人の場合
次のすべてを満たす株数 d≧b×1/10 かつ 贈与後における先代経営者等の有する会社の非上場株式等の数をdが上回ること

記号の説明
a:贈与の直前において先代経営者等が有していた会社の非上場株式等の数
b:贈与の直前の会社の発行済み株式等の総数
*発行済み株式等は議決権に制限のないものに限る
c:後継者が贈与の直前において有していた会社の非上場株式等の数
d:贈与後における後継者の有する会社の非上場株式等の数


(5) 贈与後(相続後)にも満たさなければならない要件

あくまで納税猶予なので、贈与後5年間は以下に抵触すると猶予期間が終了して納税義務が生じますので注意が必要です。
以下に該当しないように注意!

5年間事業継続期間に都道府県知事への報告、所轄税務署長への届出を怠る

後継者が代表者でなくなる
ただし精神障害者保険福祉手帳(1級)、身体障害者手帳(1級または2級)、要介護認定(要介護5)を受けた場合には代表者退任でも継続できる

会社が倒産、解散する

納税猶予適用対象株式を譲渡・贈与する(猶予株式でないものは移動可能)

持株比率要件を満たさなくなる
すなわち、後継者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超を保有し、かつ、同族内で筆頭株主である要件を満たさなくなった場合
上場会社などになる

資産保有型会社になる 【5年経過後も打切り事由となる】
資産保有型会社とは「特定資産」の価額の総額が全資産の70%以上を占める会社のことをいう
特定資産とは
・有価証券及び持分(特別子会社の株式又は持分を除く)
・その中小企業者が現に使用していない不動産
・ゴルフ場その他の施設の利用権(事業の用に供することを目的として有するものは除く)
・絵画・彫刻・工芸品その他の有形の文化的動産、貴金属・宝石(事業用として有するものを除く)
・現預金
・代表者同族関係者に対する貸付金及び未収入金
【資産保有型会社の判定式】
判定時における特定資産/判定時における資産価額総額 ≧70%
*貸借対照表の帳簿価額で判定、引当金は控除しない

資産運用型会社になる 【5年経過後も打切り事由となる】
資産運用会社とは直近の事業年度における総収入額に対して、特定資産の運用収入の合計額が75%以上を占める会社をいう
特定資産の運用収入は
有価証券の受取配当、預貯金の受取利息、賃貸不動産の受取地代・家賃がある
有価証券の譲渡価額や特定資産である不動産の譲渡価額そのものも含まれるため注意

ただし、資産保有会社・資産運用会社と判定されない場合があります。
以下のすべてを満たす場合 〇
(i)3年以上 商品販売・貸付(同族関係者を除く)等を行なっている
(ii)後継者・生計を一にする親族以外の常時使用従業員が5人以上である
(iii)常時使用従業員が勤務している事務所、店舗、工場等を所有または賃貸している
(ii)は判定日の現況で判断する

常時使用する従業員数が5年平均で贈与または相続時の従業員数の80%を下回り、一定の手続きを怠ったり正当な理由がないと判断される

減資を行なう(欠損填補目的、資本準備金の取崩は除く)

総収入がゼロになる